皆さん、こんにちは。
突然ですが当院の大きな特徴のひとつが、MRIがすぐに撮影できることです。 もちろん大きな病院でも必要があれば(ある程度の緊急性があれば)MRIはすぐに撮影できますが、そこまで緊急性が高くないと判断された場合は、数週間から1ヶ月程度先の予約待ちになることが多いと思います。MRIのメリットは、CTのような被爆がなく人体に害がないこと、詳細な画像評価ができること、造影剤という薬を用いずに血菅の情報が得られること、などが挙げられます。
今回はMRIによって血管の解離が判明し、すぐに大きな病院へと紹介することができた症例を紹介します。

症例は40台の男性。3日前と2日前に1時間程度続く回転性めまいを認め、当院を受診されました。 
受診時にはめまいは治まっており、神経学的検査(視力や視野の異常、目の動きや顔の動き、耳の聴こえや平衡機能、舌や咽頭の動き、会話や嚥下機能、手足の動きやふるえ、歩行の状態などを診察します)には異常は認めませんでした。
その他、週に2回程度頭痛を認めるようでしたが、今回のめまいの時に頭痛は 伴っていなかったようです。また、軽いめまいは年に数回程度おこることがある、とのことでした。

めまいの既往がある方の回転性めまいであり(回転性のめまいは三半規管の機能低下であることが多いです)、神経学的検査でも異常を認めなかったことから、いわゆる脳梗塞などの脳の病気は否定的かなと思われました。ただ、比較的若い男性がわざわざ仕事を休んで病院を受診されていることに、ちょっとひっかかるところがありましたので、念のため頭部MRIを撮影しました。

すると・・・
MRI
FILE0_0

MRA
VR

左椎骨動脈(小脳や脳幹と呼ばれる場所に血液を送る血管)の壁が一部裂けており、血管の壁の中に出血を来していました(MRIの画像で白く光っている所)。また裂けた椎骨動脈は不整に拡張し、血液の流れが悪くなっていました(MRAの立体画像)。
裂けた椎骨動脈近辺より、内耳動脈や弓状動脈と呼ばれる三半規管(平衡機能に関与)や蝸牛(聴力に関与)を栄養する細い血管が枝分かれしており、血管解離により一時的に三半規管の血流が悪くなり、めまいを起こしたものと考えられました。
当院受診時には幸い症状は認めませんでしたが、今後血管解離が進行していくと脳梗塞やくも膜下出血をきたす可能性もあるため、近隣の中核病院に紹介させて頂きました。

椎骨動脈解離は、青壮年者の突然の後頚部痛をきたす疾患として有名で、脳梗塞やくも膜下出血を合併するリスクが高い病気です。発症当初は厳重な血圧管理が重要になりますが、この方の場合は脳梗塞の合併はなく、血圧も正常範囲内でした。多くの場合は比較的強い後頚部痛を合併していることが多いのですが、頭痛の訴えは認めなかったため、最初は椎骨動脈解離を疑うことはできませんでした。MRIがなければ、頭部CTを撮影し出血や腫瘍がないことを確認して自宅で経過観察にしていたと思います(CTでは血管の異常ははっきり映らないことが多いです)。

MRIを撮影して本当によかったのですが、臨床診断の難しさを改めて実感した症例でした。