おおたけ脳神経・漢方内科クリニックの院長ブログ

鳥取市にある脳神経外科・脳神経内科・漢方内科の「おおたけ脳神経・漢方内科クリニック」院長ブログです。

カテゴリ: 認知症

皆さん、こんにちは。
今回は認知症についておはなししたいと思います。
日本では人口の高齢化がすすみ、それにともない認知症の高齢者数も急増しています。65歳以上の高齢者における認知症および軽度認知障害(物忘れはあるが日常生活は自立)の方は、合わせて1,000万人を超えているともいわれています(人口の10%弱になります)。

認知症症状には、中核症状と周辺症状のふたつがあります。中核症状には記憶や学習障害、判断力低下、失語(言葉が理解できない・うまく話せない)、失行(服の着方やトイレの使いかたが分からない)、失認(見たもの、聞いたもの、触れたものが分からない)などがあります。これら中核症状に、不安、うつ状態、妄想、幻覚などの精神症状(周辺症状)が加わってくると、家族の介護負担が増えていきます。

認知症の診断には、物忘れが年齢による生理的なものか、あるいはアルツハイマー病などの病気によるものか、はたまた全く別の病気によるものか、の判断が重要になってきます。そのためには、患者さんの経過(病歴)をしっかり聞くことと心理検査(長谷川式簡易知能評価スケールなど)を行うことが最も大事ですが、一度は脳の画像診断を受ける必要があります。

例えば、60代の男性、数年前から物忘れの自覚があり、仕事でミスを指摘されていた。長谷川式スケールは24点(30点満点で20点以下が認知症)で、軽度認知障害の疑いになります。頭部MRIを撮影すると、
視床梗塞

左側の視床というところに小さい脳梗塞を認めました。これが軽度の物忘れの原因と考えられたため、このかたには血液サラサラの薬をはじめて、その後物忘れはすすんでいません。
その他、以前このブログで紹介した慢性硬膜下血腫などでも物忘れのような症状を認めることがあります。

このほかにも、認知症に似た症状をおこす病気がいろいろあります。
とくに、最近急に物忘れがすすんできたかたの中には、今回のように脳梗塞が隠れていることもあるので注意してください。

症例は80代の女性の方です。
息子さんと二人暮らしをされていますが、この冬頃からに元々認めていた認知症が急激に悪くなった、とのことで当院を受診されました。

以前はデイサービスの準備も自分で行い、日常生活に見守りは必要ない状態だったようですが、最近ぼーっとすることが多く、入れ歯をいれるのも忘れてしまうようです。また、近所に一人で買い物に出かけて帰れなくなり、警察に自宅まで送ってもらったこともあるそうです。
診察室には車イスで入室されました。お話はできましたがやや反応が鈍い印象でした。誰かに介助してもらえばゆっくり歩行はできましたが、自力での歩行は困難でした。診察してみると右上下肢の動きが悪くなっており(右不全方麻痺)、家族に話を聞いてみると最近右手をあまり使わないようだ、とのことでした。また、頭部に古い皮下血腫(たんこぶ)を認めました。

問診票を見た段階では、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などを考えていましたが、実際に診察してみると、軽い意識障害、右不全麻痺、頭部打撲の既往などの所見から、別の病気が頭に浮かびました。

頭部MRIを撮影してみると・・・ 
FILE0FILE0_0
頭の右側に三日月型の血種ができており、脳が強く圧排されていました。
これは慢性硬膜下血腫という病気で、高齢者の方が頭をぶつけた後、数週間から3か月程度の経過で頭と頭蓋骨のすき間に少しずつ血がたまり、頭痛、手足の麻痺、物忘れなどの症状をきたします。程度が軽ければ止血剤などの薬で、程度が重くても比較的簡単な手術で治療が可能です。正常圧水頭症とともに治る認知症としても有名な病気です。

この方の場合は、血種が大きく麻痺もきたしていたため、近隣の病院に連絡し手術を受けて頂きました。ご家族のお話では、手術後麻痺も認知症状もすっかり良くなったようです。

このように、ご高齢の方が急に元気がなくなる、今まで出来ていたことができなくなる、物忘れが悪化する、などの症状をきたした場合、慢性硬膜下血腫や脳梗塞などの病気が隠れていることがありますので、皆さんご注意ください。

このページのトップヘ