おおたけ脳神経・漢方内科クリニックの院長ブログ

鳥取市にある脳神経外科・脳神経内科・漢方内科の「おおたけ脳神経・漢方内科クリニック」院長ブログです。

こんにちは。
今年になってから、片頭痛発症予防の新しい注射薬が発売されました。
エムガルティアジョビアイモビーグの3種類です。
いずれもCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という血管拡張にかかわる因子の中和抗体で、片頭痛の回数減少と発作時の痛みの軽減が期待できます。
エムガルティの臨床試験成績では、平均で月の片頭痛の日数が8.6日から3.6日分減り片頭痛発作がゼロになった例も10%をこえています(アジョビ、アイモビーグも同等の効果が期待できます)。
当院で使用した実感としては、難治性の慢性頭痛の患者さんの多くが、半分以下に減っている印象です。
ただデメリットもあって、注射代が3割負担の場合1本12400円(別途再診料、注射処置料などがかかります)と高額で、これを月に1回程度の間隔で継続投与する必要があります。
一般的な内服の予防薬(ミグシス、インデラル、デパケン、トリプタノールなど)がきかない方にも効果がありますので、頭痛でお困りの方はご相談ください。

エムガルティなど



みなさん、こんにちは。今回はちょっと変わった名前のついた病気の症例です。

小学3年生の男の子。3年生になってから、人の顔が大きくみえたり小さくみえたりする。自宅でも学校でも同じようなことがおこり、30分から40分程度つづく。テレビでみた「不思議の国のアリス症候群」と同じ症状であったため、母親に相談して当院受診となりました。
頭痛の既往はありますが、発育に問題のない元気な男の子です。また、頭の中の病気を疑わせる神経症状なども認めませんでした。
これは、漢方医学的には有名なポロプシーといわれる症状で、不思議の国のアリス症候群とも呼ばれます。自分のからだやまわりの人や物が、大きくみえたり小さくみえたりゆがんでみえたりします。まるで童話でアリスが体験したような感覚がみられるため、このような病名がついています。
ポロプシーには苓桂朮甘湯という漢方薬が効果があるため、1日2回で処方しました。
2週間後に来院されましたが、漢方薬を飲み始めてから症状は一度もおこっていませんでした。1日1回に減らしてもう1か月分処方。その後も症状の再発は認めず治療は終了としました。
不思議の国のアリス症候群は成長とともに自然治癒しますが、苓桂朮甘湯がよくききます

みなさん、こんにちは。今回はちょっとめずらしい頭痛を紹介します。

40代女性。3週間前からつづく頭痛で当院を受診されました。頭痛は2日に1回の頻度でおこり、今朝はとくに頭痛が強かったとのことでした。近医で痛み止めを処方してもらっていましたが、効果がないようです。
頭部MRIを撮影すると、脳腫瘍や脳出血などの異常は認めませんでしたが、脳血管に多発性の血管れん縮を認めました。
血管攣縮1

これは可逆性脳血管れん縮症候群といわれる病態で、脳血管が収縮することによって急性の激しい痛み(雷鳴頭痛といわれ雷でうたれたような強い痛みのことが多い)をおこします。入浴や排泄、性行為などが引き金になることがあり、最近では違法薬物などが原因のこともあります(原因不明のことも多いです)。
ながびく頭痛の原因が分かり、ご本人さんは安心された様子でした。治療としては、血管拡張作用のある塩酸ロメリジンというお薬を処方しました。
1週間後に再診されたときには、頭痛は数回程度でかなり軽減していました。しばらくお薬は継続してもらい、1ヶ月後に再度MRIを撮影しました。
血管攣縮2

画像上、血管れん縮は改善していました。頭痛は消失しておりましたので、お薬は中止としております。

比較的めずらしい頭痛ですが、女性のながびく頭痛でときに見受けられますのでご注意ください。


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