今回は両足のしびれの症例を紹介します。

60代女性の方。 3ヶ月前より両足の外側がしびれるとのことで当院を受診されました。
過去に右坐骨神経痛の既往があり、ペインクリニックで腰椎すべり症を指摘されているそうです。
現在両大腿外側から下腿にかけてびりびりとした痛みがあり、歩行がやや不安定な状態でした。両下肢の筋力低下や排泄障害は伴っていませんでした(これらの症状があると外科的治療が必要になることもあります)。
ちなみに、腰椎MRIの写真は次の通りです。
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腰椎の3番目(L3)と4番目(L4)の間ですべり症を認め、脊柱菅が狭窄し神経が圧迫されていました。ただ、画像的には神経の圧迫は強くはなかったので、漢方薬による治療を行う方針としました。

漢方医学的には、どちらかというと寒がりで手足末端が冷える、背部を中心に発汗がある、少し便秘気味などの症状は認めましたが、食欲や睡眠は良好で倦怠感もなく、比較的元気な印象でした。
診察してみると、手足の末端に冷えの所見を認め、お腹は下腹部が軟弱無力(小腹不仁、腎虚といわれる状態です)で心窩部は若干冷たくなっていました。舌をみると、やや暗赤で舌下静脈の怒張(お血の所見)を認めました。脈の力は比較的良好でしたが、若干の渋り(血の巡りが悪い状態)を認めました。 

小腹不仁が明らかでしたので、腎虚による腰痛や下肢のしびれに効果のある牛車腎気丸とし、腰椎すべり症に伴って脊髄周囲の血の巡りが悪くなっていることが予想されましたので(西洋医学的なお血の所見)、血の巡りをよくしながらびりびりとした神経痛に効果のある疎経活血湯を合わせて処方しました。さらに、当院にある物理療法の治療機器(低周波・中周波・高電圧などの複合的な電気治療が可能なASTEOや水の力で全身をマッサージするウォーターベッドなど)も利用してもらうことにしました。

2週間後に来られた時には、「足のしびれは6割程度まで改善しました」と言われました。漢方薬は有効と判断し同処方を継続しました(もちろん物理療法の効果もあります)。さらに2週間後、「最初に来たときよりも大分良くなっています。ただ腰を伸ばすと足がしびれます」と言われました。歩いてもらうと、歩行時足がスムーズに前に出るようになっていました。ただ、手足の冷えの所見は持続しており、診察上も血の巡りが悪い所見が持続していたため、一旦牛車腎気丸がお休みとし代わりに桂枝茯苓丸を疎経活血湯と一緒に投与しました。さらに2週間後、「しびれは4割程度までよくなりました。筋トレができます」とのことでした。まだ完全にはよくなってはいませんので、漢方薬を微調節しながら治療を継続しております。

このように、漢方薬は西洋薬とは違うアプローチで痛みやしびれに対処することが可能です。今回報告した腰痛以外に膝の痛みなどにも効果がありますので、お困りの方はぜひ一度ご相談ください。