おおたけ脳神経・漢方内科クリニックの院長ブログ

鳥取市にある脳神経外科・脳神経内科・漢方内科の「おおたけ脳神経・漢方内科クリニック」院長ブログです。

カテゴリ: 頭痛

こんにちは。頭痛の症例報告です。
症例は30代の男性。数か月前から続く左目の違和感と頭痛で眼科を受診。眼科精査で異常なく、頭の精査目的に当院紹介となった方です。頭痛は左眉の上に限局しており、下を向くと痛みが増強されました。ここ数か月以内に、風邪に罹患した既往なし。頭部MRIMRAを撮影し、脳や頭の血管には異常所見は認めませんでしたが、副鼻腔内が白く光って見えており、副鼻腔炎と診断しました。

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とくに両側の上顎洞(頬の部分)と左前頭洞(眉の部分)が白く光っており、浸出液や膿がたまっている状態です。

この方には、抗生剤、去痰剤、漢方薬(荊芥連翹湯という漢方薬がよく効きます)を投与しました。

副鼻腔炎による頭痛の特徴としては、読書やパソコン操作などで下を向いたときに頭痛や頭重感を強く感じる頭がぼーっとした感じが続く頬や目の奥などにも痛みがある鼻水鼻づまりの症状がある(自覚がないことも多いです)、などが挙げられます。

コロナウイルス感染症やインフルエンザもまだまだ流行っていますので、鼻炎症状のあとに頭痛(とくに頭重感や顔面痛)が続けば、副鼻腔炎にもご注意ください。

こんにちは。
今年になってから、片頭痛発症予防の新しい注射薬が発売されました。
エムガルティアジョビアイモビーグの3種類です。
いずれもCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という血管拡張にかかわる因子の中和抗体で、片頭痛の回数減少と発作時の痛みの軽減が期待できます。
エムガルティの臨床試験成績では、平均で月の片頭痛の日数が8.6日から3.6日分減り片頭痛発作がゼロになった例も10%をこえています(アジョビ、アイモビーグも同等の効果が期待できます)。
当院で使用した実感としては、難治性の慢性頭痛の患者さんの多くが、半分以下に減っている印象です。
ただデメリットもあって、注射代が3割負担の場合1本12400円(別途再診料、注射処置料などがかかります)と高額で、これを月に1回程度の間隔で継続投与する必要があります。
一般的な内服の予防薬(ミグシス、インデラル、デパケン、トリプタノールなど)がきかない方にも効果がありますので、頭痛でお困りの方はご相談ください。

エムガルティなど



みなさん、こんにちは。今回は頭痛の慢性化についてお話しします。

50代の女性が、頭痛と腰痛を訴えて来院されました。
頭痛は5年ほど前より、週に3回程度の頻度で続いていました。そのため、市販の鎮痛薬を一日おきに内服しています。そのほか、同時期より腰痛も続いており、整形外科や整骨院に通っているがなかなかよくならない、とのことでした。
頭痛に関してはひどい肩こりを認めましたので、緊張型頭痛の慢性化をきっかけとした薬物乱用頭痛と判断しました。薬物乱用頭痛になると、脳が痛みに対して敏感になってしまい頭痛の回数がふえ、痛みをおさえようとして薬の量がふえていく、という悪循環になってしまいます。
この方には、慢性化した頭痛に効果のあるアミトリプチンという予防薬を開始し、頭痛発作時にはロキソプロフェンを内服してもらうように説明し、長年飲み続けてきた市販薬は中止するように説明しました。
腰痛に対しては漢方薬大防風湯エキス疎経活血湯エキス)を開始しています。
2週間後に来院したときには、頭痛はほぼなくなってロキソプロフェンを飲むこともなかった、とのことでした。腰痛も軽減している様子でした。比較的長期間頭痛が続いていましたので、もうしばらくアミトリプチンは継続する予定です。

このように、慢性化した頭痛には予防薬がありますので、お困りのかたはご相談ください。私の印象としては、週に2回以上頭痛があれば予防薬を内服したほうがよいのではないかと思っています

またまた頭痛の症例です。

症例は30代の女性です。 元々偏頭痛の既往があり、月に10回程度頭痛を認めるとのことでした。今回は3日前の夜に、何かに打たれたような頭痛(患者さん本人の表現)が出現し、3日連続手持ちのスマトリプタン(偏頭痛の特効薬であるトリプタン製剤のひとつ)を内服しているが頭痛が続くとのことで当院を受診されました。

頭痛は左前頭部に限局しており、スマトリプタンを内服すると一時的には頭痛は改善するそうですが、すぐにぶり返すとのことでした。嘔気や嘔吐はなどの随伴症状は認めず、項部硬直(くも膜下出血や髄膜炎など脳表面を覆うくも膜の炎症で出現する所見 首が硬くなります)や神経学的な異常所見も認めませんでした。
重症感はありませんでしたが、何かに打たれたような頭痛であったことやスマトリプタンの効果があまりないこと、などから一度頭部の精査が必要と判断しMRI及びMRAを撮影しました。

すると・・・、
ぼうすい状動脈瘤


左内頚動脈(頭の中で一番太い血管)が海綿静脈洞と呼ばれる場所を走行する部分で紡錘状に拡張している所見を認めました(左内頚動脈海綿静脈洞部の紡錘状動脈瘤といいます)。普通の動脈瘤は風船状になりますが、この場合は血管が弾性板という組織を失い血管壁全体が膨らみます。前回提示したような血管の解離でも血管壁が不整形に膨らみますが、今回MRIでは解離の所見は認めませんでした。解離を起こしていなければ、血管が破けたり詰まったりする可能性は低いので経過をみることが多いです(時に徐々に大きくなって周囲の組織を圧迫すると治療が必要になることがあります)。とりあえず、数ヵ月後に再度画像評価を行う予定としました。

今回の頭痛に関しては、スマトリプタンが効かないことよりロキソプロフェンを頓服で処方し、漢方薬を試してみることにしました。
漢方医学的には、手足末端の冷えがある、便秘気味、睡眠は頭痛のため不良、肩凝り、などの症状を認め、頭痛は月経前後や雨降り前にひどくなるそうです。
診察してみると、手足の末端に冷えの所見を認め、両側の脇腹周囲が固くなっており(胸脇苦満 何らかのストレスの影響が伺われます)、臍周囲を圧迫すると痛みを訴え(お血の所見)ました。舌をみると、舌の腫大・歯痕(水毒)、舌下静脈の怒張(お血の所見)を認めました。

お血と水毒(簡単にいうと血のめぐりや水はけが悪い状態)が明らかであったため、桂枝茯苓丸加よくいにん(血に作用する漢方薬)と五苓散(水に作用する漢方薬)を合わせて投与しました。

 2週間後に来られた時には、「調子よいです。頭痛も良くなってロキソニン(ロキソプロフェン)は一回使っただけです」と言われました。頭痛とともに肩凝りも良くなっており、便通も毎日あるとのことでした。普段の偏頭痛もほとんど認めておらず、こんなに効くのかとこちらがびっくりしたくらいです。ただ、手足の冷えはまだ持続していましたので、しばらく漢方薬は継続することにしました。

この方は、頭痛、MRI、漢方と色々ありましたが、色々なことを1日で済ませることができました。

平成30年になりました。開院してまだ2ヶ月しか経過していませんが、たくさんの患者さんに来院して頂き、身の引き締まる思いでおります。皆様方が少しでも健康で快適に生活できるように、スタッフ一同頑張って参りますので、今年もおおたけ脳神経・漢方内科クリニックをどうぞよろしくお願いいたします。
さて、今年最初の症例も頭痛と漢方から始めたいと思います。 

症例は20代後半の女性です。 元々頭痛持ちで、月に1回程度は頭痛を認めていたようですが、最近週に2回は頭痛を認め、市販の頭痛薬の効果も今一つとのことで当院を受診されました。
頭痛は両こめかみがずきずき痛み、若干体動での増悪を認めるようでしたが、前兆はなく嘔気や嘔吐、音過敏・光過敏などの随伴症状は認めませんでした。元々肩凝りを認め、最近肩凝りが強くなっている、とのことでしたので、緊張型頭痛の増悪と判断しました。筋弛緩薬や少量の抗うつ薬などの予防薬も検討しましたが、患者さんが希望されなかったため、漢方薬で調節する方針としました。 

漢方医学的には、手足末端の冷えがある、睡眠不良で寝起きが悪い、ホットフラッシュがある、手掌発汗あり、月経時に肌荒れがある、仕事が忙しくて倦怠感が強い、いらいらする、などの症状があります。
診察してみると、手足の末端に冷えの所見を認め、両側の脇腹周囲が固くなっており(胸脇苦満 何らかのストレスの影響が伺われます)、臍周囲を圧迫すると痛みを訴え(お血の所見)となっていました。舌をみると、やや暗赤で辺縁が厚くなっており(肝うつの所見)、舌の腫大・歯痕(気虚あるいは水毒)、舌下静脈の怒張(お血の所見)を認めました。

仕事のストレスからか心と体の緊張が強くなっているようでした。さらにホルモンバランスの乱れも生じ、ホットフラッシュや不眠、いらいら、肌荒れなどの症状も呈していました。診察の所見もそれを裏付けていましたので、ホルモンバランスを整え血の巡りをよくする作用のある加味逍遥散桂枝茯苓丸加よくいにんを合わせて処方しました。

 2週間後に来られた時には、「頭痛もにきびもよくなってきた、ホットフラッシュもなくなり、朝起きるのが楽になった」と言われました。ただ、一度嘔気を伴うひどい頭痛があって、そのとき風呂に入って頭痛が悪化した、とのことでした。今回認めた頭痛は片頭痛の可能性が高いと判断し、念のためエレトリプタン(片頭痛の特効薬であるトリプタン製剤のひとつ)を頭痛時の頓服で処方しました。診察上は前回とほぼ同様の所見であったため、加味逍遥散桂枝茯苓丸加よくいにんは継続としました(ただ漢方薬の量が少し多いと言われたので少し減量して処方しました)。

さらに2週間後には、「軽いものも含めて頭痛はほぼなくなった、にきびもよくなった、今回の生理はいつもより痛みが楽だった」と言われました。主訴の頭痛はよくなっていたので一旦終了でも良かったのですが、肩凝りや手足の冷えは持続しており便通もやや不良であったため、もうしばらく漢方薬を内服していた方が全体的に調子がよくなるだろうと思われました。また今回診察してみると、下腹が冷たくなっていましたので、前回処方にお腹を温めて便通改善も期待できる当帰建中湯を合わせて処方しました。

このように漢方薬を投与していると、主訴以外の症状もよくなっていくのがおもしろいところです。

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