おおたけ脳神経・漢方内科クリニックの院長ブログ

鳥取市にある脳神経外科・脳神経内科・漢方内科の「おおたけ脳神経・漢方内科クリニック」院長ブログです。

カテゴリ: 漢方

みなさん、こんにちは。今回はちょっと変わった名前のついた病気の症例です。

小学3年生の男の子。3年生になってから、人の顔が大きくみえたり小さくみえたりする。自宅でも学校でも同じようなことがおこり、30分から40分程度つづく。テレビでみた「不思議の国のアリス症候群」と同じ症状であったため、母親に相談して当院受診となりました。
頭痛の既往はありますが、発育に問題のない元気な男の子です。また、頭の中の病気を疑わせる神経症状なども認めませんでした。
これは、漢方医学的には有名なポロプシーといわれる症状で、不思議の国のアリス症候群とも呼ばれます。自分のからだやまわりの人や物が、大きくみえたり小さくみえたりゆがんでみえたりします。まるで童話でアリスが体験したような感覚がみられるため、このような病名がついています。
ポロプシーには苓桂朮甘湯という漢方薬が効果があるため、1日2回で処方しました。
2週間後に来院されましたが、漢方薬を飲み始めてから症状は一度もおこっていませんでした。1日1回に減らしてもう1か月分処方。その後も症状の再発は認めず治療は終了としました。
不思議の国のアリス症候群は成長とともに自然治癒しますが、苓桂朮甘湯がよくききます

みなさん、こんにちは。今回は抑うつや不安感に漢方薬を併用した症例です。

30代の女性が、気分の浮き沈み息苦しさを訴えて来院されました。
話を伺うと仕事のストレスが強く、胸の痞え感寝付きが悪い下痢と便秘を繰り返す動悸が強いなどの自律神経症状も認めました。
不安感や落ち込みに対しては、レキソタンという抗不安薬を処方し、自律神経症状に対しては漢方薬を処方する方針としました。
動悸がつらそうでしたので、苓桂朮甘湯エキス甘麦大棗湯エキスを合わせて処方しました。この2つの漢方エキス剤を合わせると、苓桂甘棗湯という煎じ薬に近くなり、不安感から生じる動悸(漢方医学的には奔豚気*といいます)に効果があります。また甘麦大棗湯には、感情失禁や神経過敏(いわゆるヒステリー)、不安感からくる気分の変調に効果があります。
2週間後に来院したときには、落ち込みや不安感が楽になってやる気が出てきた、胸の締め付け感や動悸も軽減して良く眠れるようになった、とのことでした。もちろん、抗不安薬の効果と思われますが、漢方薬も症状軽減の一助となっていると思われましたので、いずれも継続投与としております。患者さんにとっても、漢方薬を内服していた方が安心感があるようです。

このように、気分の落ち込みや不安感などで当院を受診される方もいれば、頭痛やめまいを訴える方の中にも軽度のうつや不安を抱えている方もけっこうおられます。いずれにしても、漢方薬には自律神経を整える作用があるので、症状緩和のために積極的に併用するようにしています。

*奔豚気:豚がへそから胸にかけてはしってくるような異常感覚、いわゆる動悸

みなさん、こんにちは。今回は頭痛の慢性化についてお話しします。

50代の女性が、頭痛と腰痛を訴えて来院されました。
頭痛は5年ほど前より、週に3回程度の頻度で続いていました。そのため、市販の鎮痛薬を一日おきに内服しています。そのほか、同時期より腰痛も続いており、整形外科や整骨院に通っているがなかなかよくならない、とのことでした。
頭痛に関してはひどい肩こりを認めましたので、緊張型頭痛の慢性化をきっかけとした薬物乱用頭痛と判断しました。薬物乱用頭痛になると、脳が痛みに対して敏感になってしまい頭痛の回数がふえ、痛みをおさえようとして薬の量がふえていく、という悪循環になってしまいます。
この方には、慢性化した頭痛に効果のあるアミトリプチンという予防薬を開始し、頭痛発作時にはロキソプロフェンを内服してもらうように説明し、長年飲み続けてきた市販薬は中止するように説明しました。
腰痛に対しては漢方薬大防風湯エキス疎経活血湯エキス)を開始しています。
2週間後に来院したときには、頭痛はほぼなくなってロキソプロフェンを飲むこともなかった、とのことでした。腰痛も軽減している様子でした。比較的長期間頭痛が続いていましたので、もうしばらくアミトリプチンは継続する予定です。

このように、慢性化した頭痛には予防薬がありますので、お困りのかたはご相談ください。私の印象としては、週に2回以上頭痛があれば予防薬を内服したほうがよいのではないかと思っています

久ぶりにブログを更新します。

 暑い日が続きますが、皆さんは夏バテせず元気に過ごせていますでしょうか。
 夏バテを通り越して熱中症になってしまったら、点滴治療を受けるしかありませんが、もう少し早い段階で体のケアを行えば、暑い夏も比較的元気に乗り越えることもできるかもしれません。
 今回は、夏バテ予防に効果のある漢方薬の話です。
 
 漢方医学的に夏バテと呼ばれる状態を考えてみます。夏の暑さや冷房などの外気温の変化(外因と呼びます)で、自律神経・内分泌系の調節が効かなくなり、仕事や家族の悩み事(感情の変化=内因と呼びます)で消耗し、さらには冷たい飲み物の取り過ぎ、冷房のあたり過ぎ、熱帯夜が続くことによる睡眠不足(不内外因と呼びます)で本格的に悪くなります。体がだるく疲れやすい、食欲がない、気力がない、などの夏バテにみられる症状は、漢方医学的には代表的な気虚の症状です。

気虚はいわゆる元気がなくなった状態ですが、気には元来、親からもらった先天の気と、食事や呼吸により取り入れる後天の気があるといわれています。先天の気は生まれつきのものなので増やすことは難しいですが、後天の気は食事に影響されるので、漢方では気虚状態に対して、まず消化吸収能を高めることを目標にします。人参(朝鮮人参)、茯苓(サルノコシカケ科の菌類)、白朮(オケラの根)などが含まれた六君子湯気虚に伴う食欲低下に奏功します。さらに、微熱や寝汗などの炎症所見があれば、補中益気湯(が有効です。

さらに夏バテの症状に適している漢方薬として、清暑益気湯があります。暑気を清め、気を益する作用があり、夏バテにふさわしい名称です。清暑益気湯は先に述べた補中益気湯の類似処方ですが、五味子、麦門冬、人参という3つの生薬が含まれているのが特徴です。これらの3生薬で生脈散という別名があり、いずれも脱水症状を改善する作用が期待できる生薬です。よって、夏場に脱水に傾きやすい高齢者の方が、夏バテ予防に内服するのが効果的と思われます。


 その他、水分の摂り過ぎで体が重く、下痢をする場合などに用いる
五苓散()、強いのどの渇きと高体温といった熱中症のような症状に適する白虎加人参湯()、など夏場に用いられる漢方薬はまだまだたくさんあります。


 今回紹介した漢方薬はいずれも保険適応となっておりますので、夏バテになりそうな方はぜひご相談ください。

症例は50代後半の女性です。 胃腸症状や動悸などの症状で、漢方薬を処方していました。最近はふらつきと頭の締め付け感に対して、苓桂朮甘湯と九味檳榔湯をエキス製剤で投与しておりました。

乳癌の既往のある方なのですが、術後検査のために造影CTを行った後から体がえらくなったとのことで、臨時当院で当院を受診されました。動悸の頻度がやや増加しており、ふわーとするめまい感を伴い運転中もふわふわするとのことでした。頭の病気(脳梗塞など)を疑わせる所見は認めず、めまい感も吐き気や嘔吐を伴うほど激しいものではなかったため、漢方薬で治療する方針としました。

もともとのぼせる傾向の方でしたが、今回は顔面も赤みを帯びて上気しているようでした。反対に足先は冷えており、冷えのぼせの傾向を示していました。漢方医学的には、通常上から下へ流れるべき気が逆転し、気逆の状態となっているものと思われました。
気逆の状態になると、動悸や発汗、冷えのぼせ、発作性の頭痛、焦燥感、顔面紅潮、物事に驚きやすい、などの症状をきたします。治療の原則は桂枝と甘草の生薬の組み合わせで、気の逆流を下向きに戻すようにします。
今回の症例では、苓桂味甘湯(茯苓、桂枝、五味子、甘草の4種類の生薬からなります)という煎じ薬を処方しました。

2週間後の再診時には、動悸の頻度が減ってきた、頭重感が減ってふわふわしなくなった、とのことでした。顔面の赤みも軽減していました。さらに同処方を継続し、動悸、めまい感はほぼ消失しましたが、煎じ薬を内服していた方が調子が良いので微調整をしながら継続投与しております。

最近は季節の変わり目で気温や気候が一定しないためか、めまいを訴える患者さんが増えています。
めまいに用いられる漢方薬は、水の巡りが悪ければ真武湯や五苓散が、気の巡りが悪い(気逆)・気が足りない(気虚)などの気の変調があれば桂枝甘草が含まれる方剤(苓桂朮甘湯、苓桂味甘湯、苓桂甘棗湯など)や半夏白朮天麻湯、釣藤散などが、自律神経のバランスが悪ければ柴胡剤(柴胡加竜骨牡蛎湯、加味逍遙散)や三黄瀉心湯などが、患者さんの体質や状態に合わせて選択されます。

めまいでお困りの方がおられれば、ご相談ください。

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