おおたけ脳神経・漢方内科クリニックの院長ブログ

鳥取市にある脳神経外科・脳神経内科・漢方内科の「おおたけ脳神経・漢方内科クリニック」院長ブログです。

カテゴリ: MRI

こんにちは。頭痛の症例報告です。
症例は30代の男性。数か月前から続く左目の違和感と頭痛で眼科を受診。眼科精査で異常なく、頭の精査目的に当院紹介となった方です。頭痛は左眉の上に限局しており、下を向くと痛みが増強されました。ここ数か月以内に、風邪に罹患した既往なし。頭部MRIMRAを撮影し、脳や頭の血管には異常所見は認めませんでしたが、副鼻腔内が白く光って見えており、副鼻腔炎と診断しました。

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とくに両側の上顎洞(頬の部分)と左前頭洞(眉の部分)が白く光っており、浸出液や膿がたまっている状態です。

この方には、抗生剤、去痰剤、漢方薬(荊芥連翹湯という漢方薬がよく効きます)を投与しました。

副鼻腔炎による頭痛の特徴としては、読書やパソコン操作などで下を向いたときに頭痛や頭重感を強く感じる頭がぼーっとした感じが続く頬や目の奥などにも痛みがある鼻水鼻づまりの症状がある(自覚がないことも多いです)、などが挙げられます。

コロナウイルス感染症やインフルエンザもまだまだ流行っていますので、鼻炎症状のあとに頭痛(とくに頭重感や顔面痛)が続けば、副鼻腔炎にもご注意ください。

症例は80代の女性の方です。
息子さんと二人暮らしをされていますが、この冬頃からに元々認めていた認知症が急激に悪くなった、とのことで当院を受診されました。

以前はデイサービスの準備も自分で行い、日常生活に見守りは必要ない状態だったようですが、最近ぼーっとすることが多く、入れ歯をいれるのも忘れてしまうようです。また、近所に一人で買い物に出かけて帰れなくなり、警察に自宅まで送ってもらったこともあるそうです。
診察室には車イスで入室されました。お話はできましたがやや反応が鈍い印象でした。誰かに介助してもらえばゆっくり歩行はできましたが、自力での歩行は困難でした。診察してみると右上下肢の動きが悪くなっており(右不全方麻痺)、家族に話を聞いてみると最近右手をあまり使わないようだ、とのことでした。また、頭部に古い皮下血腫(たんこぶ)を認めました。

問診票を見た段階では、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などを考えていましたが、実際に診察してみると、軽い意識障害、右不全麻痺、頭部打撲の既往などの所見から、別の病気が頭に浮かびました。

頭部MRIを撮影してみると・・・ 
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頭の右側に三日月型の血種ができており、脳が強く圧排されていました。
これは慢性硬膜下血腫という病気で、高齢者の方が頭をぶつけた後、数週間から3か月程度の経過で頭と頭蓋骨のすき間に少しずつ血がたまり、頭痛、手足の麻痺、物忘れなどの症状をきたします。程度が軽ければ止血剤などの薬で、程度が重くても比較的簡単な手術で治療が可能です。正常圧水頭症とともに治る認知症としても有名な病気です。

この方の場合は、血種が大きく麻痺もきたしていたため、近隣の病院に連絡し手術を受けて頂きました。ご家族のお話では、手術後麻痺も認知症状もすっかり良くなったようです。

このように、ご高齢の方が急に元気がなくなる、今まで出来ていたことができなくなる、物忘れが悪化する、などの症状をきたした場合、慢性硬膜下血腫や脳梗塞などの病気が隠れていることがありますので、皆さんご注意ください。

こんにちは。今回は当院の脳ドックについて、説明いたします。

当院には鳥取県のクリニックでは初となる、1.5テスラMRIが導入されています。
MRIとは、Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像)の略語で、協力な磁気の力を利用して体の内部を撮影する検査装置です。X線による被爆がないので、 安全に病気の診断やフォローアップを行うことができます。また、テスラは磁力の大きさをあらわす国際単位で、その数値が大きいほど短い検査時間で質の高い画像を得ることできます。現在1.5テスラあるいは3テスラが主流となっていますので、大きな病院と変わらない画像診断を行うことができます。

脳ドックで分かることは、脳の状態(脳腫瘍、脳梗塞・脳出血、脳萎縮の有無)や脳血管の状態(脳動脈瘤・血菅奇形の有無、動脈硬化の程度)、頚部血菅の状態(最近は食生活の変化のためか頚部血菅に動脈硬化を認めることが多いです)などです。また、副鼻腔や頚椎もある程度観察することができます。

例えば、このような画像が得られます。
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また、脳ドックのサービスの一つとして体成分分析器を用いた評価も合わせて行っております(下画像参照ください)。
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体成分分析器を使用することにより、筋肉量や基礎代謝量、内臓脂肪レベル、体水分率などが分かり、現在の体の状態を知ることができます。体重が増えた場合でも、脂肪が増えたのか水分が増えたのか(むくんでいるのか)、脂肪は皮下あるいは内臓脂肪か、筋肉の量は落ちていないか、落ちていた場合上半身か下半身か、などの情報を視覚的に理解することができます。
今の体の状態を知ることで、将来起こるかもしれない病気(高血圧、高脂血症などの生活習慣病)に備えることができます。
ぜひ当院の脳ドックで、頭や体の健康状態を確認してみてください。

皆さん、こんにちは。
突然ですが当院の大きな特徴のひとつが、MRIがすぐに撮影できることです。 もちろん大きな病院でも必要があれば(ある程度の緊急性があれば)MRIはすぐに撮影できますが、そこまで緊急性が高くないと判断された場合は、数週間から1ヶ月程度先の予約待ちになることが多いと思います。MRIのメリットは、CTのような被爆がなく人体に害がないこと、詳細な画像評価ができること、造影剤という薬を用いずに血菅の情報が得られること、などが挙げられます。
今回はMRIによって血管の解離が判明し、すぐに大きな病院へと紹介することができた症例を紹介します。

症例は40台の男性。3日前と2日前に1時間程度続く回転性めまいを認め、当院を受診されました。 
受診時にはめまいは治まっており、神経学的検査(視力や視野の異常、目の動きや顔の動き、耳の聴こえや平衡機能、舌や咽頭の動き、会話や嚥下機能、手足の動きやふるえ、歩行の状態などを診察します)には異常は認めませんでした。
その他、週に2回程度頭痛を認めるようでしたが、今回のめまいの時に頭痛は 伴っていなかったようです。また、軽いめまいは年に数回程度おこることがある、とのことでした。

めまいの既往がある方の回転性めまいであり(回転性のめまいは三半規管の機能低下であることが多いです)、神経学的検査でも異常を認めなかったことから、いわゆる脳梗塞などの脳の病気は否定的かなと思われました。ただ、比較的若い男性がわざわざ仕事を休んで病院を受診されていることに、ちょっとひっかかるところがありましたので、念のため頭部MRIを撮影しました。

すると・・・
MRI
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MRA
VR

左椎骨動脈(小脳や脳幹と呼ばれる場所に血液を送る血管)の壁が一部裂けており、血管の壁の中に出血を来していました(MRIの画像で白く光っている所)。また裂けた椎骨動脈は不整に拡張し、血液の流れが悪くなっていました(MRAの立体画像)。
裂けた椎骨動脈近辺より、内耳動脈や弓状動脈と呼ばれる三半規管(平衡機能に関与)や蝸牛(聴力に関与)を栄養する細い血管が枝分かれしており、血管解離により一時的に三半規管の血流が悪くなり、めまいを起こしたものと考えられました。
当院受診時には幸い症状は認めませんでしたが、今後血管解離が進行していくと脳梗塞やくも膜下出血をきたす可能性もあるため、近隣の中核病院に紹介させて頂きました。

椎骨動脈解離は、青壮年者の突然の後頚部痛をきたす疾患として有名で、脳梗塞やくも膜下出血を合併するリスクが高い病気です。発症当初は厳重な血圧管理が重要になりますが、この方の場合は脳梗塞の合併はなく、血圧も正常範囲内でした。多くの場合は比較的強い後頚部痛を合併していることが多いのですが、頭痛の訴えは認めなかったため、最初は椎骨動脈解離を疑うことはできませんでした。MRIがなければ、頭部CTを撮影し出血や腫瘍がないことを確認して自宅で経過観察にしていたと思います(CTでは血管の異常ははっきり映らないことが多いです)。

MRIを撮影して本当によかったのですが、臨床診断の難しさを改めて実感した症例でした。

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